リスク分析の「低減・共有・回避」とは?それぞれの定義と使い分けを教えてください。
リスク分析という欄へ記載する項目として「低減、共有、回避」の3種があると記載されています。
この3つの項目のそれぞれの使い方がよく分かりません。
また表のどの部分に対して「低減、共有、回避」なのでしょうか。
補足解説いただけると助かります。
これらは「現状のリスクが許容できない場合に、どの方向性で対策を打つか」を決めるための分類となります。
サンプル文書の「PMSリスクマネジメント規程」の「7 リスクへの対応」に従い、実施されるリスクマネジメントの様式「リスクグループ分析対策表」への記載事項になります。
リスクアセスメントの実務において、抽出したリスクにどのような対策を割り当てるべきか、その判断基準について回答申し上げます。
1. リスク対応の4つの基本分類
抽出したリスクに対して、組織としてどのような態度をとるかを決定します。
実務上、リスクへの向き合い方は大きく以下の4つ(回避・低減・共有・保有)に分類されます。
- 回避:
リスクの原因となる活動を停止する(例:情報の持ち出しを禁止する)。 - 低減:
リスクの発生確率や影響度を下げる(例:マニュアル整備、バックアップ作成、データの暗号化)。 - 共有・移転:
他社とリスクを分担する(例:サイバー保険への加入、専門業者への業務委託)。 - 保有・受容:
リスクを認識した上で、追加対策をせず現状を許容する。(例:リスク評価値が設定した受容レベル(例:スコア12未満)を下回っている場合、現状維持とする。)
2. 「リスクグループ分析対策表」のどこに記載するか
ご質問の項目は、表内の「リスク対応(または対応策の選択)」という欄に記載します。
リスク分析のプロセスでは、特定したリスクに対して「現状の対策で十分か」を評価します。評価の結果、「受容レベル(許容できる範囲)を超えている」と判断されたリスクに対し、そのリスク値を下げるための「次の一手」として選択するのが、これらの対応項目です。
具体的には、特定したリスクに対して現在の管理状況を確認し、それでも残る「残留リスク」に対して、「これ以上下げるために低減を図るのか」「保険で共有するのか」といった組織としての意思決定を記載する箇所になります。
決定した分類に従い、「リスクグループ分析対策表」の「対策(実施すべき対策・対応)」および「リスク対応計画(対策・対応の実施計画)」の欄に記載することになります。
3. ISO31000に基づく7つの選択肢
最新のPマーク規格(JIS Q 15001:2023)では、リスク対応の考え方が国際標準であるISO 31000(JIS Q 31000)と整合するよう定義されています。これにより、従来よりも柔軟かつ戦略的なリスク管理が可能となっています。
これは、サイバー攻撃や国際情勢、ESG(環境・社会・ガバナンス)など、リスクが多様化し、従来の「回避・低減・移転・受容」という4つの単純な分類では対応しきれなくなったためです。
最新のサンプル文書では、JIS Q 15001:2023が推奨する国際標準(ISO 31000)に基づき、以下の7つの視点からリスクへの対処を検討するようになっています。
- リスクの回避:(4つの選択肢「回避」と同じ)
リスクの高い活動を中止する(例:USBメモリの利用廃止、高リスク事業からの撤退)。 - リスクを取る・増加させる:
戦略的な目的のためにあえてリスクを取る(例:新規事業への投資)。 - リスク源の除去:
リスクの根本原因を取り除く(例:業務自動化による人為的ミスの防止)。 - 起こり易さを変える:(4つの選択肢「低減」を細分化)
発生頻度を下げる(例:ダブルチェックの導入、マニュアルの策定)。 - 結果を変える:(4つの選択肢「低減」を細分化)
影響度を減らす(例:データの暗号化、バックアップの取得)。 - リスクの共有:(4つの選択肢「共有・移転」と同じ)
他者と分担する(例:サイバー保険への加入、専門業者への委託)。 - リスクの保有:(4つの選択肢「保有・移転」と同じ)
現状で許容する(例:リスク値が低いため、追加対策なしで運用する)。
先の4つの選択肢に、さらに詳細な選択肢(リスク源の除去、リスクを取る・増加させる等)が設けられているのは、以下のような理由です。
- 「リスク源の除去」と「低減」の違い:
例えば「モチベーション低下によるミス」というリスクに対し、教育(低減)ではなく、原因となる過重労働を解消する(源の除去)といった、より根本的な解決を図る考え方です。 - 「リスクを取る・増加させる」の活用:
新製品開発などのポジティブリスク(機会)において、あえてリスクを承知で投資を加速させる判断も、現代のリスクマネジメントには含まれます。
必ずしも、サンプル文書に規定している7つの選択肢を使う必要はありません。組織の使いやすい(分かりやすい)選択肢をお選びください。
3. 運用のポイント
様式番号(例:PMS-B02-XX)は「PMS-B02 リスクマネジメント規程」と紐付いています。まずは規程内の「4.1 リスク分析」をご一読ください。分析手法の根拠が明確になり、よりスムーズな運用が可能となります。
4. 実務的な使い分け
分析表を作成する際は、まず「起こり易さ」や「結果」(4つの分類であれば「低減」)を変えることでリスクを低減できないか検討してください。
それでもリスクが受容レベルまで下がらない場合、または対策コストが見合わない場合に、「回避」や「共有」を検討するというのが、実務的かつ審査上も評価されやすい論理展開です。
詳細は「PMSリスクマネジメント規程」に記載されております。各文書番号は「COM-B01 文書管理規程」に基づき体系化されていますので、関連付けてご確認いただけますと幸いです。


