【図解】ISO27001のリスクマネジメント用語・定義とアセスメント手順
本記事では、ISO 31000と整合するリスク対応プロセス(特定・分析・評価)の構造や、「リスクの不確かさ」「リスク源」といった重要概念を図解を用いて整理しました。
ISO/IEC 27000(JIS Q 27000)に基づき、情報セキュリティにおける「リスクマネジメント」や「リスクアセスメント」の用語定義とその関連性を、図を用いて徹底解説します。
「リスクとは?」「脅威とは?」「脆弱性とは?」「リスクアセスメントとは?」といったそれぞれの用語が、どのように関連し、影響し合っているのかを一覧でご確認いただけます。
複雑な用語の関係性やプロセス全体の流れを視覚的に理解できるため、ISMSの規格理解や実務における基礎知識としてご活用ください。
【この記事でわかること】
- ISO 31000と整合した「リスク対応プロセス」の全体像と図解
- 情報セキュリティにおける「リスク」の最新定義と、プラス・マイナス双方の捉え方
- 「リスク特定・分析・評価」からなるリスクアセスメントの3ステップ
- ISMSの実務で混同しやすい「リスク源」と「脅威・脆弱性」の正しい関係性
目次
「リスク」とは
ISO/IEC 27000において、「リスク(risk)」は「目的に対する不確かさの影響」と定義されています。
この場合の「目的(objective)」とは、特定の結果を達成するために、組織の情報セキュリティ方針と整合をとって設定された「情報セキュリティ目的」を指します。したがって、情報セキュリティリスクアセスメントおよびリスク対応は、この“情報セキュリティ目的”の達成を阻害する要因(または促進する要因)に対して実施することが要求されています。
「不確かさ」とは何か?(プラスとマイナスの概念)
リスクマネジメントにおける「不確かさ」には、マイナスの影響だけでなく、プラスの影響(機会)もあるという考え方に基づいています。
かつてISO/IEC Guide 51(安全側面)などでは、リスクを「好ましくない影響(危険)」のみに限定して考えていました。しかし、2009年のISO/IEC Guide 73(リスクマネジメント用語規格)の改定に伴い、好ましくない影響を排除するだけでなく、好ましい影響(ビジネスチャンスなど)も含めて「リスク」と捉える定義へと拡張されました。
【情報セキュリティにおけるリスクの捉え方】
一方で、ISO/IEC 27000の「リスク」の定義内(注記6)には、以下のような記述があります。「情報セキュリティリスクは、脅威が情報資産のぜい弱性又は情報資産グループのぜい弱性に付け込み、その結果、組織に損害を与える可能性に伴って生じる。」
つまり、全般的なリスクマネジメントとしてはプラスの影響も含みますが、情報セキュリティの実務においては、依然として「好ましくない影響(組織に損害を与える可能性)」を主たるリスクとして扱うのが一般的です。
「リスクアセスメント」とは
「リスクアセスメント(risk assessment)」とは、リスク特定、リスク分析、およびリスク評価のプロセス全体を指します(JIS Q 0073:2010 参照)。
これをシンプルな構造に分解すると、以下のようになります。
リスクアセスメントを構成する3つのステップ
- 1. リスク特定(Risk Identification)
リスクを発見、認識、および記述(明確化)するプロセスです。これには、リスク源、事象、それらの原因、および引き起こされる結果(影響)の特定が含まれます。 - 2. リスク分析(Risk Analysis)
特定されたリスクの性質を理解し、リスクのレベルを決定するプロセスです。 - 3. リスク評価(Risk Evaluation)
リスク分析の結果をリスク基準と比較し、リスクの大きさが受容可能かどうかを判断するプロセスです。
「リスク源」と「脅威・脆弱性」の関係
「リスク特定」において重要となる「リスク源」という用語は、ISO 31000(リスクマネジメント指針)において「それ単体、または他の要素との組み合わせによって、リスクを生じさせる力を本来潜在的に持っている要素」と定義されています。
従来のリスクマネジメントでは、好ましくない影響をもたらす潜在的要因を「ハザード(潜在的危険要因)」や「リスク因子」と呼んでいましたが、リスクの定義にプラスの影響が含まれるようになったことから、より中立的な「リスク源」という用語に変わりました。
情報セキュリティの文脈に置き換えるならば、このリスク源は、従来から使われている「脅威」の本質的な内容(または脆弱性を突く要因)に該当すると考えて差し支えありません。
よくある質問(お客様の声)
- Q. リスク値3で対策が必要な場合、すでに管理策が講じられていても対応計画は必要ですか?
- A. 「新たな追加対策」は不要ですが、現在の安全な状態を維持するための「継続的な運用」を計画として明記することを推奨いたします。
→ リスク値3で対策が必要な場合、すでに管理策が講じられていても対応計画は必要ですか?はこちら - Q. 「現状のリスクが許容できない場合に、どの方向性で対策を打つか」を決めるための分類となります。
- A. 可能です。重要度の低い資産を整理し、核心にリソースを集中させることで、審査基準を満たしつつ運用負荷を最小限に抑えられます。
→ リスク分析の「低減・共有・回避」の定義と使い分けについてはこちら - Q. リスク対策をしていれば、対策することはなくなるのでしょうか。
- A. リスクグループ分析対策表の目的としては、情報資産に対するリスクを抽出し、対策を講じるものなので、徐々に減っていくことになります。
→ リスク対策をしていれば、対策することはなくなるのかについてはこちら
【必見】JIS Q 27001:2023 準拠のISMSリスクアセスメントの具体的な手順
最新の JIS Q 27001 の要求事項とISMSリスクアセスメントの実務作業を完全に紐付けた「具体的な進め方」を解説するページです。評価基準の策定、リスクの特定・分析・評価、対応計画と適用宣言書の作成、残留リスクの承認という具体的な4つの手順を、実務作業と紐づけた分かりやすい図解とともに網羅しています。あわせてご参考ください。

