ISMS, プライバシーマークに関するさまざまな資料と役立つリンク集

ISOの共通テキスト「附属書SL(調和させる構造)」とは?HLSからの変更点と最新要求事項を解説

更新日:2025/12/05 (公開日:2014/07/03)
ISMS解説資料.  18,893 views
※本記事は、ISM Web store が作成・検証したものです。

ISOでは、組織が複数のマネジメントシステムを導入する際、システム間の整合性を高めて運用の負担を軽減することを目的に、ISO 9001、ISO 14001、ISO/IEC 27001などのISOマネジメントシステム規格(以下「MSS」)の共通化に向けた議論が行われてきました。

その結果、ISO/TMB(技術管理評議会)の下に設置されたJTCG(合同技術調整グループ)において、各MSSの基盤となる共通の構造・テキスト・定義が開発されました。

この記事で解決できること

  • 「HLS(上位構造)」から最新の「調和させる構造」への名称・定義変更の動向がわかる
  • 日本規格協会(JSA)が一般公開している最新の関連資料(3種)の役割と活用方法がわかる
  • マネジメントシステム規格(MSS)に共通する「3つの柱(構造・テキスト・定義)」の具体的内容がわかる

目次

ISOマネジメントシステム規格の共通構造(調和させる構造)

※画像クリックでPDFが表示されます

かつては「上位構造(HLS:High Level Structure)」や「附属書SL Appendix 2」として広く知られていました。

2021年5月、附属書SLの改訂を反映した「ISO/IEC専門業務用指針第1部 統合版ISO補足指針」が発行され、附属書SL Appendix 2「ISO MSS上位構造、共通テキスト及び共通用語・定義」は、「調和させる構造(HS:harmonized structure /共通の箇条番号,箇条タイトル,テキスト並びに共通用語及び中核となる定義)」に名称変更されました。

現在の「ISO/IEC 専門業務用指針 第1部(統合版 ISO補足指針)」においては、以下のように定義・名称変更されています。

【現在の正確な位置づけ】

附属書 SL(規定) マネジメントシステム規格の提案のための調和させる方法

  • Appendix 2 (規定) MSSのための調和させる構造,及びその利用に関する手引

今後、制定・改正されるすべてのISO MSSは、原則としてこの「調和させる構造(共通の箇条番号、箇条タイトル、テキスト並びに共通用語及び中核となる定義)」を採用して開発することが義務付けられています。

現在、日本規格協会(JSA)の「マネジメントシステム規格の整合化動向」に関する案内ページ(マネジメントシステム規格の整合化動向)では、これら「調和させる構造」とそのガイダンス文書に関する以下の和訳資料(PDF形式)が一般公開されており、規格の真意や設計背景を誰でも詳細に確認できるようになっています。

日本規格協会(JSA)で提供されている3つの資料は、それぞれ以下のような目的と位置づけを持っています。これらを合わせて理解することで、規格の表面的な文言を超えた「真の意図」が見えてきます。

資料名役割と位置づけ組織の担当者が押さえるべき意図
① 和文テンプレート
(2025年10月更新版)
規格の「核」となる共通テキスト、共通箇条、共通用語を定めた規格開発上の規定(Normative)文書。すべてのMSSの基本構造です。複数の規格(例:ISMSとQMS)を社内で「統合」して運用しやすくするための、もっとも重要なベースラインとなります。
② Appendix 2 – MSS作成者への手引
(2025年12月更新版)
規格を作る側の委員会に向けた、共通テキストの解釈やJIS化(日本語訳)の留意点をまとめた参考(Informative)文書。「なぜこの表現になっているのか」という意図が解説されています。安易な解釈の逸脱を減らし、規格間の両立性を高めるための具体的な助言が詰まっています。
③ Appendix 3 – 用語の手引
(2025年10月更新版)
マネジメントシステムにおける「正しい用語集」を作るためのステップや概念体系(階層・連関関係)を解説した参考文書。社内規程を作る際にも役立つ「優れた定義の作り方」が示されています。言葉の定義や解釈を社内で曖昧にしないことが、確実なシステム運用の土台となります。

【コラム】規格の「言葉」の裏にある意図:Objective(目的・目標)を例に

「MSS作成者への手引」に示されたJIS化(日本語訳)にあたっての留意事項を読み解くと、規格が組織に求めている本当の意図が見えてきます。マネジメントシステムで極めて重要な「objective(目標)」という言葉です。規格が求める「目標」には、単なる数値合わせではない本質的な解釈の意図が存在します。

  • 方針・目的(定性的な方向性)との連動:そもそもなぜそれをやるのかという理由や、組織が目指すべきベクトル(方針)を明確にする。
  • 目標(定量的な到達点)への落とし込み:その方向性に基づき、期間や数値を定め、達成できたかどうかを評価できるようにした具体的な指標(これがobjectiveの実体です)。

規格の共通テキストは単なる形式的なルールではなく、「組織の方向性(目的)を定めた上で、それを具体的なアクションと指標(目標)に落とし込み、評価・改善させる(PDCA)」という明確な意図を持って設計されていることが、こうしたガイダンス資料から深く読み解けます。

マネジメントシステム規格(MSS)共通要素の3つの柱

各マネジメントシステム規格の調和(整合化)は、主に以下の3つの要素で構成されています。

1. 共通の箇条番号及び箇条タイトル(旧:上位構造 HLS)

すべてのMSSで共通して使用される「箇条4〜箇条10」の中心的な骨組みです。組織の状況から改善に至るまで、PDCAサイクルに沿った一貫した流れが定義されています。

箇条番号箇条タイトル(日本語 / 英語)
(箇条1〜3)1.適用範囲、2.引用規格、3.用語及び定義
箇条 4組織の状況 (Context of the organization)
箇条 5リーダーシップ (Leadership)
箇条 6計画 (Planning)
箇条 7支援 (Support)
箇条 8運用 (Operation)
箇条 9パフォーマンス評価 (Performance Evaluation)
箇条 10改善 (Improvement)

2. 共通テキスト(コア要求事項)

各箇条の下位項目(例:4.1、5.1など)における具体的な要求事項の文章(テキスト)も共通化されています。
※「XXX」部分には、品質(QMS)、環境(EMS)、情報セキュリティ(ISMS)など、各分野の名称が挿入されます。

  • 4. 組織の状況
    • 4.1 組織及びその状況の理解 (※「気候変動」の考慮に関する要求が追加
    • 4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 (※利害関係者の要求に気候変動が含まれ得る注記が追加
    • 4.3 XXXマネジメントシステムの適用範囲の決定
    • 4.4 XXXマネジメントシステム
  • 5. リーダーシップ
    • 5.1 リーダーシップ及びコミットメント
    • 5.2 方針
    • 5.3 組織の役割、責任及び権限
  • 6. 計画策定
    • 6.1 リスク及び機会への取組み
    • 6.2 XXX目的及びそれを達成するための計画策定
    • 6.3 変更の計画策定
  • 7. 支援
    • 7.1 資源 / 7.2 力量 / 7.3 認識 / 7.4 コミュニケーション
    • 7.5 文書化された情報(7.5.1 一般 / 7.5.2 作成及び更新 / 7.5.3 文書化された情報の管理)
  • 8. 運用
    • 8.1 運用の計画策定及び管理
  • 9. パフォーマンス評価
    • 9.1 監視、測定、分析及び評価
    • 9.2 内部監査(9.2.1 一般 / 9.2.2 内部監査プログラム)
    • 9.3 マネジメントレビュー(9.3.1 一般 / 9.3.2 マネジメントレビューへのインプット / 9.3.3 マネジメントレビューの結果)
  • 10. 改善
    • 10.1 継続的改善 / 10.2 不適合及び是正処置

3. 共通用語・中核となる定義

各規格間で言葉のブレをなくすため、基本となる主要な用語と定義が統一されています。これらは社会情勢等に応じて、適宜最適化が行われます。

【共通定義される主な用語(一部抜粋)】

組織 / 利害関係者(ステークホルダー) / 要求事項 / マネジメントシステム / トップマネジメント / 有効性 / 方針 / 目的 / リスク / 力量 / 文書化した情報 / プロセス / パフォーマンス / 外部委託する / 監視 / 測定 / 監査 / 適合 / 不適合 / 修正 / 是正処置 / 継続的改善

※これらに加え、ISO 31000等の「リスクマネジメント関連用語」や、各規格固有の共通用語(ISO/IEC 27000など)が組み合わされて各MSSが構成されます。

3つの柱を徹底して共通化する「整合化のビジョン」

ここまで見てきた「構造・テキスト・定義」という3つの柱が、なぜすべてのマネジメントシステム規格で厳格に統一されているのでしょうか。その理由は、ISOが目指す明確な「整合化のビジョン」にあります。

ISOでは、異なる国際規格同士が手を取り合い、組織内で違和感なく両立できる水準をこれまで以上に引き上げることを求めています。そのため、規格の根幹となる以下の要素を極限まで一致させる方針をとっています。

【ISO MSSが一致を促進する4つの要素】

  • 箇条タイトル
  • 箇条タイトルの順序(PDCAの流れ)
  • 要求事項のテキスト(共通の文章)
  • 言葉の定義

※規格ごとの相違は、個々の適用分野(品質、環境、情報セキュリティなど)の運営において、どうしても特別な違いが必要とされる部分にのみ限定して認められます。

この徹底した共通化のビジョンがあるからこそ、私たちはISMS、Pマーク、ISO 9001といった複数の仕組みをバラバラに運用するのではなく、ひとつの洗練された「組織のデザイン」として統合し、無駄のないシステム運用を実現できるようになるのです。

まとめ:これからのマネジメントシステム運用

これら「調和させる構造」のドキュメントやガイダンスが示しているのは、「マネジメントシステムは、社会やビジネス環境の変化(グローバルなリスク対応やナレッジの属人化防止など)に柔軟に適応し、組織の持続可能性を高めるためのツールである」という点です。

自動化ツールへの依存や形だけの文書構築にとどまらず、自社の「組織デザイン」や「ビジネスの方向性」の中に、規格が持つ本来の意図(共通構造のメリット、気候変動対応、言葉の正確な定義)を正しく組み込んでいくことこそが、これからのISMSやPマーク、ISO 9001運用において実効性を高める鍵となります。

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執筆・監修:ISM Web store カスタマーサポート

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