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文書と記録の切り分けで頭を悩ませております。

公開日:2011/06/14
ISMSサンプル文書集.  14,753 views
※本記事は、ISM Web store が作成・検証したものです。

この記事は、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

文書と記録の切り分けで頭を悩ませております。「情報資産台帳」を例に挙げてご相談させて下さい。

昨年の維持審査にて「情報資産台帳は改定履歴を残すべき」との指摘を受け、弊社では現状「文書」扱いとしております。

しかし「文書管理規定」COM-B01-1.00を読んでおりますと、情報資産台帳は「記録」に分類される(従って、改定管理を行わない文書)となっています。

文書を、方針/マニュアル、規定書、手順書/フロー、記録類と分類するならば、情報資産台帳は「記録」に分類されることが理解できるのですが、改定に関してどのように対応すべきか悩んでおります。

アドバイスをお願い致します。

ISMS(ISO/IEC 27001)の運用において、「文書」と「記録」の切り分けは多くの管理責任者様が直面する難所です。特に「情報資産台帳」はその性質上、両方の側面を持つため解釈が分かれがちです。

審査員の指摘意図を汲み取りつつ、貴社の規定(COM-B01)との整合性を保ち、かつ実務的な負担を軽減するアドバイスを申し上げます。

1. 「文書」と「記録」の本来の違い(規格の視点)

まず、混乱を避けるためにISO/IEC 27001における「文書化した情報」の定義を再整理します。

  • 文書(保持すべきもの):
    「どうあるべきか(ルール)」を定めたもの。ルールが変われば「改定」され、常に最新版を参照する必要があります。
  • 記録(保持すべきもの):
    「何をしたか(事実)」を記したもの。一度作成された事実は変わらないため、通常「改定」という概念はありません。

記録とは、文書の状態を指しているものであり、方針、マニュアル、規定書、手順書、フローなども、すべて旧版となって使用しなくなった場合は、記録として保管(管理)することになります。

記録管理とは、改訂が行われなくなったものの管理ととらえて良いかと思います。

たとえば、申請書のようなものは、申請後、承認されるまでは、厳密にいうと「文書」として管理し、承認後は改訂されることはないので、記録として管理されます。

文書管理を行う際、その区分を明確にした状態で、管理することが効果的であるため、一般に、改訂を行わうことがない文書を「記録類」として、文書管理します。

2. なぜ「情報資産台帳」は悩ましいのか

情報資産台帳は、本来「現在の資産状況」という事実を記した「記録」の性質が強いものです。しかし、組織の状況変化に合わせて頻繁に更新される「動的な記録(マスターリスト)」であるため、審査員は「いつ、誰が、なぜ資産を増やしたのか(または評価を変えたのか)」という変更の経緯(トレーサビリティ)を重視します。

審査員が「改定履歴を残すべき」と指摘したのは、台帳そのものを「規定書(文書)」にしたいわけではなく、「リスクアセスメントのプロセスが適切に繰り返されている証跡(履歴)」を確認したいという意図があったと推測されます。

「情報資産台帳」を記録類として取り扱うということは、承認後は、記録として管理し、新たな情報資産を追加する場合は、新たに「情報資産台帳」をつくるということを意味します。

もし、記録類として取り扱わない場合(内容の改訂が行われる)は、どこをどのように改訂したのかがわかるようにする必要(改訂履歴)があります。
規定書などと同じような管理が必要になるということです。

3. 解決のための2つの実務的アプローチ

規定書(COM-B01)の「記録」という分類を維持しつつ、審査員の要望を満たすには、以下のいずれかの方法が現実的です。

  • 記録として「版番管理」を行う:
    「記録」という分類のまま、台帳(Excel等)の中に「改定履歴」シートを作成します。
    規定書のような厳格な「文書管理台帳」への登録は不要ですが、ファイル内に「2024/04/01:新システム導入に伴う資産追加」といった履歴を残します。これにより、COM-B01の分類を壊すことなく、審査員が求める「変更のプロセス」を証明できます。
  • スナップショット(時点管理)方式:
    台帳を更新する際、古いファイルを消さずに「2023年度版」「2024年度版」として別ファイルで保存します。
    「最新版が常に現在の事実(記録)である」という立場を貫く方法です。変更点を確認したいと言われた際は、新旧のファイルを比較して説明します。

今回、ご質問いただいたケースに関しては、弊社がご支援させていただいているお客様では、御社と同様な指摘を審査員から受けたことがなく、また、今回、審査員がどのような観点から言われているのかは分かりませんが、一般的には、記録として取り扱われるケースが多いかと思います。

今後の更新審査等のことも踏まえ、自社でどのように解釈を確立するかが重要になるかと思います。

4. 審査員への対応方法

次回の審査では、以下のように説明されることをお勧めします。

「弊社の規定では、台帳は『時点の事実』を示す記録として管理しています。ただし、資産の変更プロセスを明確にするため、台帳ファイル内に更新ログ(履歴)を設ける運用に改善しました。これにより、規定上の整合性と変更の追跡可能性を両立させています。」

規格の解釈は審査員によって揺れがありますが、重要なのは「自社がなぜその管理方法を選んだのか」という論理(ロジック)を確立していることです。

サンプル文書「COM-B01 文書管理規定」の思想としては、実務負担を減らすために台帳を「記録」としていますが、上記のようにファイル内での履歴管理を併用することで、より強固なISMS運用が可能になります。

文書 vs 記録 の管理ポイント

区分主な対象管理の要点
文書 (Maintain)方針、規定書、マニュアル承認、改定履歴、最新版管理が必須。
記録 (Retain)議事録、申請書、ログ、台帳改定は不要だが、作成後の保護検索性が重要。

※情報資産台帳は「記録」でありながら、「更新される事実」を追うために履歴を持つのが実務上のベストプラクティスです。

ISM Web store

執筆・監修: カスタマーサポート

ISMS、プライバシーマーク、ISO9001の取得・運用支援において、25年以上のコンサルティング実績を持つ専門チームが執筆しています。現場での指導経験と、数多くの審査対応ノウハウを凝縮して制作した文書・教育用テキストを販売しています。ご購入の有無にかかわらず、無料メールサポートにて専門家が直接お答えします。